急速なコンピュータ化による働き方の変化や長時間労働、職場の対人関係の希薄化といった社会背景のもと、我が国ではうつ病等の気分障害の患者数が2000年以降急激に増加し、厚生労働省の調査によると、2008年には100万人を突破、2014年には111万人、2017年には127万人と一向に減少する兆しがありません。
そうした状況下、うつ病等により休職した方が安全な復職を実現するための医療手段として、リワークプログラム(以下、プログラム)が1990年代後半から精神科のリハビリテーションとして開発され、多くの医療機関で実施されるようになりました。
うつのために休職した方に対しては、従来から、薬物療法と自宅等での休養が治療として行われてきましたが、それだけでは企業の求めるレベルでの回復が得られず、ひとたび復職を果たしても、再休職をしてしまう方が増加するという現実がありました。 このような中、私たちは休職により厳しい立場に置かれている方、様々な不安を抱く方が再休職しないための術を身につけ、安心して長く働くことのできる社会にしたいという思いを持ち続けてきました。
プログラムの必要性ならびに有用性が認識され、全国の精神科医療機関で実施されるようになりました。私たちは2008年に、プログラムを実施する医療機関により「うつ病リワーク研究会」(以下「研究会」)を組織し、当初は38施設で始まりましたが、2021年には200施設を超えるまでになっております。
2018年2月に研究会が一般社団法人化されて「一般社団法人日本うつ病リワー協会」(以下「協会」)となったのを契機に、同年8月、「虎ノ門リワーク研究所」をスタートさせました。そして、2019年2月には「一般社団法人東京リワーク研究所」として再出発し、2021年6月には「株式会社東京リワーク研究所」を併設してより機能的な研究所として活動しております。
当研究所では、精神疾患から社会復帰しようとする人達のためになる調査研究を行い、復職及び再休職予防についての社会の理解を深める事業を通じて、うつ等による休職者その他支援を必要とする人々が、希望を持ち、安心して働き続けられる社会の実現を目指しております。そして、このような活動で得られた経験や知識をより多くの方に利用いただくために、精神科顧問医、あるいはRecopといったサービスを行っています。
精神科顧問医サービスでは、一般企業と契約させていただき、産業医活動の中で最近とくに対処が困難となっているメンタルヘルス不全事例に焦点を当て、産業医の方々をサポートするサービスです。当研究所所属の経験豊かな精神科専門医が直接社員の方と面談して様々なご本人の悩みをうかがうとともに、場合によっては医療機関を紹介することも行います。これにより本人の悩みの背景となっている疾患を専門医として明確にすることにより、どのようにすれば安定した勤務の継続できるかを考えていきます。また、産業医や産業保健スタッフ、人事労務関係者、上司の方々からも情報をいただき、社員の勤務に関する種々の会社としての困りごとに対する意見を述べ、課題の解決を図ります。
Recop(Rework Coordination Program)サービスは、休職中の社員を対象として、この度新たに開発したサービスです。私たちが始めた「リワークプログラム」は医療機関で実施している関係上、医師やスタッフが知り得た情報はご本人の許可なしには、会社には伝えられません。つまり、本人にとって有益な情報でも勝手に会社には伝えられないという大きな制約があります。このRecopサービスでは、休職している本人・医療機関(主治医およびリワーク機関)・会社の間の情報連携を密にとるために「リワークプログラム」のスタッフ(リワークコーディネーター)がその役割を担います。すなわち、本人・医療機関・会社・当研究所の4者の間で契約を結び、本人と会社に役立つ情報をリワークコーディネータがー集め、精神科顧問医を通じて産業医や会社に伝達することによって、より安全で確実な復職を実現するサービスでこれを仲介する機能を当研究所が果たします。これまで「リワークプログラム」を利用したが、どのような成果が得られたのかわからない、会社として不安に感じている困りごとを「リワークプログラム」のスタッフと共有したい、といった会社からのご要望に応える形でサービス化いたしました。
このような、これまで私たちが20年近くにわたって蓄積した経験とノウハウを、機能やサービスとして結実させた結果が当研究所という形になりました。どうぞ様々なお困りごとは気軽にご相談いただければと思います。
東京リワーク研究所
所長 五十嵐良雄
(医学博士、精神保健指定医、日本医師会認定産業医)
経歴
昭和51年 |
北海道大学医学部卒業。埼玉医科大学で精神医学を研修 |
昭和53年 |
埼玉医科大助手 |
昭和59年 |
イタリア政府留学生としてミラノ大学へ留学 |
昭和61年 |
ユネスコ特別研究員としてユトレヒト大学(オランダ)へ留学 |
昭和62年1月 |
埼玉医科大学精神医学教室非常勤講師 |
昭和63年4月 |
医療法人全和会 秩父中央病院長に就任 |
平成15年8月 |
メディカルケア虎ノ門開設、院長に就任 |
平成20年3月 |
うつ病リワーク研究会発足、代表世話人に就任 |
平成24年3月 |
東京大学大学院(精神保健分野)非常勤講師(令和元年退任) |
平成29年3月 |
第13回ヘルシー・ソサエティ賞医療技術者(イノベーター)部門受賞 |
平成30年2月 |
一般社団法人日本うつ病リワーク協会理事長就任 |
平成30年8月 |
虎ノ門リワーク研究所(現:東京リワーク研究所)設立 |