【日経グッデイ掲載】在宅勤務継続中、こころの病を遠ざけるのは「体内時計の維持」

日経グッディ掲載
在宅勤務継続中、こころの病を遠ざけるのは「体内時計の維持」

わたしは東京・大手町のビジネス街のまん中で精神科・メンタルヘルスのクリニックを開いていますが、コロナの影響で、大手町からサラリーマンが消えました。多くの会社がコロナ禍の拡大を受け、出社を率を20~50%としたため、オフィス街はガランガラン、多くの社員は在宅勤務をしています。

初診で来る患者さんを診ていると、多かれ少なかれ、どの患者さんにもコロナの影響多少なりとも出ています。それは、コロナに罹患するという恐怖だけでなく、緊急事態宣言による自宅待機、在宅勤務、外出規制といった間接的な影響も含まれます。ということは、私たちを含めて、あらゆる人が影響を受けているということでもありす。

こころの病気というのは本人と周りの環境との相互作用で起きてくることが多く、100%環境が原因ということは非常に少ないものです。そして、さまざまな制限があっても、そのストレスの受け取り方や、影響の度合いというのは人によって違います。

なぜ、人によって影響の度合いは違うのでしょう? いろいろな制限がある中でも、うまくいく人たちをみていると、いくつかのパターンがあります。

在宅勤務が向いている人もいる

【1】まず、「在宅勤務が向いている人」。わたしが診ている患者さんたちの中には、在宅勤務になってハッピーになった人がいます。しかも、少数ではありません。在宅勤務が向いている人にはいくつかの特徴があります。

まず、彼らは自分で自分の生活をコントロールできる人たちです。朝は決まった時間に起き、いつもの時刻に食事を摂り、昼間は仕事をしてというように、毎日同じリズムでそれを守るといった、規則正しい生活を週5日間できる人たちです。

さらに土日の2日間は自分の時間として充実した生活して、そうした生活を1週間、2週間、3週間…半年…ずっとできる人は、在宅勤務に向いています。

朝は決まった時刻に起きて、日光を浴びる

この「毎日のリズム」というのは、脳のメカニズムの一つである「体内時計」に関わっています。体内時計が私たちの身体に備わっているおかげで、日中は身体と心が活動状態に、夜間は休息状態に切り替わり、身体のリズムを整えて健康を保つことができるのです。この体内時計がスムーズに働くためには、毎朝、決まった時刻に起床して日光を浴びることが大切です。できれば毎日2時間ほど、窓際で過ごすとよいとされています。

一定のリズムを保って生活できる人は在宅勤務に向いていますが、反対に、生活リズムが乱れて、体内時計が乱れると、不眠や食欲低下、気力がなくなるなどのうつの症状などが現れやすくなります。

逆に言えば、在宅勤務で健康を維持するために大切なのは、体内時計を乱さないように、朝は決まった時刻に起床して、仕事や料理、身体を動かすことなど、毎日行う行動をおおよそ時間を決めて同じ時間に行ない、日が暮れて夜になったら、身体を休める。動物としての人間本来のリズムを守って生活することです。

働きやすい職場環境を自宅に作る

【2】そして2番目。在宅勤務になるということは「家庭が職場になる」ということです。今までずっと会社で働いていた人たちは、これまで自宅を職場にしたことがありません。環境は大きく変わります。だからこそ、その環境が大切です。

どのくらいの広さの家か。仕事が出来る部屋があるかということは大事です。自宅は元々仕事をするための部屋までは考えて作られてはいません。、また、机と椅子はオフィス仕様になっているかも大事です。家庭用の家具では、長時間座っていると、肩が痛い、首が凝るという体に不調が出てくることもあります。パソコンやプリンターなど、仕事をするのに十分な機器があるか。そうしたものがそろっていて、テレワークに向いている職場環境を自宅に作れるかどうかといった環境は、とても重要な要素です。

モノだけではなく、ほかに家族との関係もあります。パートナーが共働きで、仮に2人だけの世帯であれば、お互いに協力し合うことで、家事なども共同で行うという環境だと、在宅勤務がとてもうまくいっているという例が私の患者さんにもたくさんあります。

一方で、奥さんが主婦で、小さいお子さんがいてよく泣き出すとなると、家での仕事はなかなかうまくいかないことが多いようです。家族が気になる、逆に家族が自分を気にすることにもなります。息を潜めて仕事をしているようでは長続きしません。

対人関係が苦手な人は体調が好転する

【3】そして3番目、「もともと、対人関係が苦手な人」は、在宅勤務で体調が好転します。特に、会社の中で上司や同僚、客先などとの対人関係に悩んでいる人たちは、在宅勤務になったことで、一転、苦手な相手と会わなくて済むようになります。このような対人のストレスから解放されて、悩まずに済み、うまくいくことが多いのです。

遠隔で仕事が出来るIT業は在宅向き、ただ新人は?

【4】そして、さまざまな制限がある中でも、うまくいっている人たちが多い業種・職種があります。これが4番目の条件です。遠隔で仕事が出来るIT業では、仕事がうまく進みます。なかでも。ベテランの人は結構うまくいっています。

しかし、新人の人は仕事を教わらないとできませんので、リモートワークでは業務を教わるのに、直接面と向かって教わればさほど時間のかからいことでも、とても手間と時間がかかります。このために在宅勤務ではよほど配慮してもらわないと、仕事がうまくいかなくなります。

「在宅勤務中の休職」を避ける早期受診

ここまで在宅勤務がうまくいく人のパターンを伝えてきましたが、「在宅勤務が向いていない人」もいます。

在宅勤務というのは「家で、休日のように何をしていてもいい」というわけではありません。勤務ですから、アウトプットや成果を出さなければなりません。自分でペースを作れない人や、周囲から助言をもらうことで業務を行っていた人などは、周囲とのコミュニケーションがなくなり、相談や助言をもらうこともできず、思うように仕事の成果を出せなくなる。こうして在宅勤務が向いていない人が、あぶりだされてしまうのです。

そういう人たちは、在宅勤務が続くと、気持ちが落ち込み、眠れない、食欲が減退する、気力がなくなるといった、うつの症状が現れるようになり、休職に至ることもあります。在宅勤務中に休職するというケースです。実際に私は、在宅勤務となってうつを発症した方の休職診断書を何人も書いています。

そして、コロナ感染を怖れて医療機関に行くこと自体に抑制がかかって、受診しない人もとても増えていると思われます。かなり体調が悪くなってから、やっと受診することになるのです。これでは、治るのにも時間がかかります。本当はもっと早い段階で医療機関を受診してほしいのです。

いま、医療機関では患者さんが少なく、待ち時間も少なくなっていますので、受診のチャンスともいえるでしょう。マスクや手洗い等、十分な対策を取って、体調が悪化する前に早期に医療機関を受診してください。

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